「なー」
「はい」
「なー、セフニー」
「だから何ですか」
「ねみー」
「眠いんですか」
「だりー」
「疲れてるのはあなただけじゃないですよ」
「てかさー俺」
「はい」
「ゆで卵たべたい」
「はいはい」
「あ、ゆで卵なら何でもいいってわけじゃねーぞ? 茹でたてのあっつあつのやつでさー、そいつを『あちっ、あちちっ』って言いながら、殻をむいてだなー」
「ええ」
「つるっと出てきた真っ白な白身。そこに塩をちょっとだけつけて」
「あー」
「カプッて齧って黄身を見ると、まんなかのところがオレンジ色に半熟になってて、ほんのちょっとだけ、トロッてなってんの」
「はいはい」
「そのトロッてなってるところに、またちょっとだけ塩つけて、食う! ふたくちめ食う! すかさず!」
「ああ」
「もぐもぐもぐ、んー、んまいっ!」
「……ずいぶん具体的に描写しますね」
「あああー食いてー」
——2歳年上のこのひとが。
やくたいもない、こういう話を、えんえん口に乗っけるときには。
「セフナ、ゆで卵、食いてー」
「……はいはい、食べたいのはわかりました」
——プロ意識の高い彼にとっては、本意ではない出来の仕事をしてしまって、忸怩たる思いに、ひとり苦しくとらわれているときだから。
「おまえ、持ってねーよなあ?」
「……何を、です?」
「そうゆう茹で卵。あ、あと塩」
——疲れている彼が、ひととき憩うことのできるように。
「……持ってるわけないでしょ」
「かははは、だよなあ? 持ってたら、逆にビックリだわ、ははは」
——肩を貸せる位置にいる自分が、すこしだけ、誇らしくもある。
(この記事は、「fragments of feelings」12です。)
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(これね、よく見ると、セフナがベク側のイヤフォンをはずしてるんですよね……そのマンネのさりげない心遣いが、もうたまらない感じで……!!)
(小説仕立てのものを、前回、初めて発表したんですが(「ある朝の切符・ある夜の通話」)、そのときはたくさんのご感想をありがとうございました♡ すごく嬉しく拝見しました。それ以外にも、コメント、とても嬉しくありがたく拝見しています。まだそのお返事もかけていないのに、新たに発表してしまってすみません。でも、ご感想を聞かせていただけると、すごく嬉しいです♪ 今週木曜日がお休みなので、そのときにお返事を書く予定です♪)