7.【Kai】メランコリー
このMV『Universe』のなかで、カフェオレ・トーンの服が、一番似合っていたのが、カイだったと思うのです。
ざっくりしたタートルネックのセーター、そこからのぞく白いブラウスの裾、ベージュのズボンとモカシン。
明るい栗色のさらさらした髪、小麦色のなめらかな肌と、すんなりと調和がとれていて、彼が本質的に持っているメランコリーな美しさを、あますところなく引き出してくれていたと思うのです。
このMVは、色調を抑えられ、スローモーションを多用した、静謐な印象のシーンの連続で構成されているという大前提があります。
この前提のもとでは、被写体たちの身体そのもの、あるいは身体にまつわる表現が、もっともアピールしやすい映像になっていたと思うのです。
そうなると、カイは強いです。ほんとうに。
特に近頃の彼は。
青年になったこのひとは、非常に力を持った表情を見せてくれるようになったと思います。
彼の内側になにか強い光源があって、それによって抗いがたい魅力を放っているかのような、そんな気がするのです。
彼はこのMVのなかで、最も多くのシチュエーションを演じていますし、カット数も一番多い(15カット)です。
「椅子にすわる彼の身体を、ぐるぐる巻きにしていたロープが切れて、解放される」──という、非常に重要な「転換」のメタファーとしてカイが抜擢されている、というこの一点をとっても、彼のこの作品内での役割がもっとも大きなものであることを示していると思います。
口をひらけば、わりとふにゃふにゃ、わちゃわちゃしているところもあるひとだけれど(年相応に──じゃないな、年齢よりも、ちょっと言動が幼いところがあると思うぞ、キミは笑)、近頃の彼は、青年らしい、しっかりした言葉を口にするようになったと思います。
12月23日、福岡公演の一番最後の各自のコメントで「僕が楽しいと思っていれば、会場にいる皆さんもきっと楽しく感じてくださるだろうと信じています。それが一番たいせつなことだと思って、がんばりました」──ということを言ったときに、私はかなり感動しました。
実は、この公演自体がジョンヒョンの葬儀の2日後ぐらいのことで、私の頭の中は「アイドルを応援するって、どういう意味を持つことなんだろう」という問いかけでいっぱいだったからです。
そのことに対するひとつの答えを、カイが示してくれたように感じたのです。──きっと、私が想像もできないような、さまざまな経験を経て、24歳の彼は素敵な大人になったんだなあと、しみじみしました(注1)。
★ カイのカットは15カット。評点は10.5点で、敢闘賞受賞。
「O」(Outstanding 際立っている)をつけたのは、冒頭にあげた写真のシーン。この映像が一番すき。
このひとは、全般的に「E」(Excellent)をつけた場面が多くて、「A」(Average 平均的)が、ほぼ、なかった。それで得点が高くなったと思うのです。
けれども準優勝のスホや、審査員特別賞のシウミンにはあった、「楽曲とリップシンクしている」場面が、カイには一場面しかありません。それで「上位争い」に食い込めなかったのかなーと分析しています。
注1 「素敵な大人のひとになったなあ」などとしみじみ感動していたのもつかのま、カイくんは、いまだに頭抱えたくなるようなことも、平気でやるひとですしねえ……
あのですね、先日のドバイからの帰国の際、ドバイ空港で7人で撮った写真がスホさんのインスタに上がったじゃないですか。
長いフライトにそなえて、パーカーとかトレーナーとか楽な服装をしてるメンツが多かったのは「うん、わかる♪」と思ったのですけど、カイくんがねえ……
キミねえ、それ、パジャマじゃないの、誰がどう見ても?
あのー、アレですか、それは「写真だとパジャマであるかのように見えてしまうけれど、実は普通の服」なの?(違うと思うけど)
ものすごーく疑問なんだけど、
a. 「起きたまま」の格好で空港まで行ったの?(アイドルなのに? いや、一般人でもどうかと思うけどね、キミ!)
b. ホテル→車→空港だから、別にいいやってこと?
c. カイくんは腰痛持ちなので、長いフライトのときには少しでも腰への負担を軽くするために、空港までジーンズを履いてきて、空港内で下だけスウェット素材のズボンに着替える、というエピソードを聞いたことがあるけれど、このパジャマもそういう理由? つまり空港内で着替えた?(に、してもパジャマだよね、それ)
d. それよりも問題なのは、このカイの格好を、スタッフさんや周りのヒョンたちが誰も注意しなかったってことですよ……
e. ねえ、スホさん、リーダーとして何か言ってあげようよ……チャニョルは「めんどくせーこと、俺、言いたくねーや」って思ってそうだし、ベクは「俺と関係ないんで、別にどーでもいいです」って思ってそうだけど、ミンソクさま(美意識の人)とかジョンデくん(健全なる常識人)も、スーパースルー?
f. 一番の原因は「暴れ馬の手綱をきちんと締められる、ギョンスヒョンがいなかった」ってことなのかしら?
(ああもう、いろんな意味で頭を抱えるわ、このひとたちには!)
8.【Sehun】きみがすべてをさらっていく
──というわけで、優勝はこのひとでした。
ああ、もう持ってけドロボウ! こんちくしょうめ!
並みいるヒョンたちをゴボウ抜きにして、きみが優勝ですよ、ぶっちぎりでね!
だいたいがこのMV評、1記事分を7〜8時間かけて書いてるんですが(ははは)、書きながらも確認のためにMVを何度も見直し、
「ベクとジョンデの歌唱力(ベクもいいけど、ジョンデもいい、ああでもやっぱベクが、いやジョンデだって)」
「まったくうちのリーダーときたら、歌もうまいしハンサム(笑)だし」
「チャニョルの120パーセントのアイドルっぷり」
「ドギョンス様のこの拝みたくなるような表情筋(そして歌だってすばらしい!)」
「それにしてもスタイリストさん、グッジョブだわ、カイのカフェオレ・コーデ……」
「ああっ、ミンソクさま…! このせつなさは、もう恋? 恋なの?」
──などなど、さまざまな感情に胸をうちふるわせながら、ボーイズたちの魅力に酔いしれなければならないので、ほんとうに忙しいこと、このうえないのですが。
ところが、何回見直しても。
ほかのヒョンたちだって、それぞれ、ここまで語り倒してきたように、すごく魅力的なのに。
セフナが微笑むと、世界がその時を止める。
ほかのすべてが、音と色彩を失って、彼以外、もう何も見えなくなるから。
はっきり言って、このMVで、セフンは「ほぼ、何もしてない」。
積みあがった木の小さな椅子のおもちゃを見てる(「……これ、どーしたもんかな…?」)。
こんがらがったラーメンみたいなEXOマークの絵を眺めてる(「……うーん……謎…?」)。
ぐちゃぐちゃに絡まった紐の塊をほどこうとしてる(「これ、ほどくの大変だなー。…てか、無理じゃね?」)
8人全員集合したときに、必死に笑いをかみ殺してる(「やっべ、また吹き出しちゃったら、監督さんに怒られちゃう。けど、チャニョリヒョンが笑かしてくんだもん」)。
それ以外、何もしていない。
ただ、このMVの一番最初に登場して、その立ち姿と横顔の美しさを見せつけ、そして一番最後に登場して、こっちに向かって、微笑んだだけ。
──だけど、優勝するんだな、このEXOのマンネのオ・セフンが!
常々、私は「このセフンはEXOのトリックスターだ」という持論を持っております。
なぜって、彼は私をいつも「驚かせる」存在だからです。
どうしてなのかよくわからないけれど、私が彼を見ていて「魅力的だな」と思うとき、それはたいてい、驚きの感情とセットになっています。
「へえ、意外とこのひと、こういうところがあるんだ」
「セフンって、こういうひとだと、思わなかったなー」
──そういう驚きは、私を「はっとさせ」、心に隙間を作ります。
その隙間にすうっと光がさしこむように、セフンが入り込んできて、心を強くとらえて離さなくなる。
セフンの魅力って、そういう種類のものなんだと思うのです。
黒髪に戻して、前髪を額におろした彼は、ふだんより少年に戻ったみたいな、とても素直な表情をしています。
たぶん私は、今回、そこに「はっとした」んだと思います。
セフンは、この8人のなかだと、もっとも「男性性」をその身体から色濃く滲ませている青年です。
同じ美青年でも、チャニョルが一点の曇りもなく明朗でフォトジェニックな「アイドル顔」であるのに比べ、このひとの顔立ちは、陰影が強く、険しささえ感じさせるようなクール・ビューティなタイプの美形です。
その彼が、ふわりと画面のこちら側にいる私たちにむかって微笑んでみせた。
彼自身の怜悧なニュアンスをあざやかに裏切るようにして。
ベクとジョンデの歌声に魅了され、チャニョルの明るさを好ましいと思い、ギョンスの思慮深さにしみじみし、ハンサムな(笑)スホヒョンにドキドキし、カイの美しさにうっとりし、ミンソクさまのかわいらしさに胸をせつなくさせたとしても。
すべてセフンの最後のほほえみがさらっていく。
いやーもう……持ってけドロボウ!
優勝はきみだ!! セフナめ、私はきみが大好きだーーー!(逆ギレ)
★ セフナは10カット。評点は14点。優勝!
その「度肝を抜かれる」ほどの美青年っぷりが、このMVの一番最初と最後に配置されていることも含めて、初見時点で彼の優勝を決めました。
(2018.01.21)
(この記事は「勝手にMV評」13・「Kai」③・「Sehun」⑤です。)
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