I listened to your voice. I found myself waiting for your new music.
あなたの声を聴いた。あなたの新しい音楽を、わたしは待っていたんだと気づいた。
★この記事は、「【SHINee】MV『Good Evening』(1)メロディがはじまる」から続いています。もしお読みでない方は、そちらから読んでくださると嬉しいです。
現実感をひきはがす
このMVに散りばめられた、さまざまなギミックは、私たちの現実感をねじまげ、それをひきはがすことにあると思っています。
緑の照明で色彩がコントロールされた部屋。
モニターの上にしゃがみこんで、オニュと向き合うテミン。
所在なげな横顔をこちらに見せているオニュ。
同時に、かたわらのモニターにも彼の別角度からの顔が写りこんでいます。
カメラに寄っていくミノの表情も、同時進行で画面に映し出されています。
この夜を追い越して
君を迎えにいくよ
操り人形みたいな仕草で両手をあげるオニュに、投影されているタキシードの男性の映像。
もしかしたら君が漠然と僕のことを
思い浮かべるかもしれないから
今 僕が君の元へいくよ
温室の部屋でひとり踊るキー。
ひとりじゃ恋しい夜 我慢したくないから
今 君を迎えにいくよ
温室の部屋で、また、キツネがオニュのことを見つめていて。
そうすると、雨粒がぽつりと、オニュの手の甲に落ちてくる。
だんだんと苦しくなる息が 君と僕の間を狭める
会いたいという君の一言が 僕の心を急かすんだ
温室のなかに降りそそぐ激しい雨。
僕はもう少し速度を上げて
窓辺の雨のように 透明なしずくとなって輝いてる
水の中に落ちていく4人。
息苦しい話も全部 Oh
僕が一歩ずつ近づくほどに
世界の全てが君に変わっていく
僕は先に知りたいんだ 君の全ての瞬間を
あの月光よりも
そして、圧巻なのは、ここの箇所だと思います。
温室のソファに並んですわる4人に、ビニールシートがかぶされて、そこにペンキがかけられていくのですが。
I can feel we’re looking at each other through this door
Let’s see…
Your eyes, nose, lips, cheek
4人にかけられ終えたとき、その不思議なペンキは、森の木々を映し出しはじめるのです。
(彼らの足元に大量に散らばっているのは、たぶん、オレンジの皮。)
あの空の上よりも遠くで回っていても
雲に僕の心を飛ばして
キラキラとした月と共に光る夜
——あれ?
ふりかえったキーくん、誰かの声が聞こえた、みたいな顔をしている。
月の光が射してくる 遅くなる前に君を迎えにいくよ
びっくりする君のことを考えながら 今 迎えにいくよ
この夜を追い越して 僕が君を迎えにいくよ
迎えにいくよ
映像を構成する色調も、周到にコントロールされていて、水色とあざやかな緑の2色が大きな役割を果たしています。
そこにときおり、アクセントになる赤やオレンジや白がさしこまれてきて、それが目を惹きます。
オニュの橙色の髪、ミノの白いスーツ、キーのカーマインのズボン、テミンのピンクに彩られた唇。
ダンスも、不思議な印象でした。
カムバステージでのダンスも見たのですが、操り人形みたいな、不可思議なカリオグラフィーです。
空間の重力が狂っているせいで、彼ら自身の動きを制御できないような。
あるいは、いけないお薬を飲んでしまって、酩酊しているような。
水の中で溺れて、沈んでいくひとのような。
アクションの緩急もかなり奇妙です。キレのいい、速い動きがビシバシと続くかと思えば、スローモーションで撮影したみたいな、ひどくゆっくりした動きが繰り出されてきたり。
いくつものモニターが置かれた部屋、そのモニターに映しだされる彼らと、部屋の中にいる彼ら。
4人が覗き込む井戸、水の中に沈んでいく4人の体。
オニュと目があうキツネ。
温室で、ビニール越しにペンキをかけられていくと、そのペンキが「森の中」を映し出していって、その不思議な力を使って彼らは、あの森の中へと至る方法を見つけたかのようにも見えます。
どのシーンに注目しても、見ている、聴いている私たちの持つ現実感を、巧妙にねじ曲げていくような、そんな映像だと思いました。
ねじ曲げて、役立たずにしたあげくに、その現実感を手放しなよ、と誘いかけてくるような。
このMVが描き出そうとしているのは、今、私たちがいる「現実の世界」から離脱して、「異世界に入り込むこと」なのだと思うのです。
現実世界でぽっかりと口をあけた、何らかの入り口(それは井戸かもしれない)。
何らかの手段(体に不思議なペンキをかけられること、かも?)。
何らかの使い手(温室に現れたキツネ?)とコンタクトして。
「ひどく不思議な世界」に入り込むこと。
なぜなら、そういう「現実ではない世界」でしか——「私たちの心象のなかに生まれた世界」でしか、私たちは、SHINeeと「会う」ことができないのですから。
いえ、ここは肯定の条件節を使って、言い直しておくべきでしょう。
すなわち、「私たちの心象のなかの世界」であるならば、私たちは、「SHINeeに会うこと」ができるのです。
★歌詞の日本語訳・画像はお借りしています。ありがとうございます。
(この記事は「SHINee」13です。)
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