When you are sad, we're gonna cast a spell upon you.
悲しくなったら、呪文をかけてあげるね。
もともと私は、「あるひとつの曲に、つよく惹きつけられて、その1曲だけをループでくりかえし聴いてしまう」というような、かなりオブセッションなことをしてしまうタイプの聞き手ではあるのですが。
それにしても、この「Gentleman」という楽曲が私にかけてくれた「魔法」は、とても強烈でした。
「Magic」が届いてからというもの、1日のうちのどこかの時間帯、この1曲だけを「無限ループ」でひたすら聴く、というようなことを続けてしまっています。
好きで好きで、たまらないんです。
一番最初に耳にしたときの胸がときめく感じが、色あせずに、あざやかなまま残っています。
これほど何度もくりかえし聴いているのに、まだ、恋が続いているかのように。
悲しい曲でもなく、ドラマチックに感動的な歌詞でもないのに、私は、この曲を聴いていて、何度か、涙をこぼしてしまいました。
「メロディが好きすぎて」、我慢できなかったのです。
こみあげてくる涙を。とてもバカみたい、だと自分でも思うのですが。
「Gentleman」が、私は、このアルバムの中でもっとも好きです。
この楽曲は、「Magic」というアルバムの中で、8番目におさめられていています。
「CBX」(1曲め)が「つかみの一曲」。
「Horololo」(3曲め)が「勝負曲」。
各自ソロは5・7・9曲め(シウミン・ベク・チェンの順)。
「Cry」(10曲め)は、アルバム終盤の大きな重点となる「泣かせのバラード」。
「In This World」(11曲め)は、コンサートの最後でも歌われた「締めの1曲」。
そんなふうに、11個の歌が立ち並ぶこのアルバムのなかで、8番目の「Gentleman」は、たぶん「箸休め」的な意味合いを持っているのだろうと思います。コンサートではファンサ時に使われていました。
「まあ、リラックスして聴いてちょうだいよ」的な、かわいらしい珠玉の小品、といったところなのだろうけれど。
イントロがはじまってすぐ、3人の声がそれぞれの角度からぶつけられます。
楽しげな歌声で、メロディの階段をおりていくベッキョン。
そこへすぐさま、「You deserve it!」(きみは、それに値するよ!)と、おどけたシウミンの声が聞こえてきます。
そこに覆いかぶさるように、チェンのファルセットで、サビのメロディが提示されます。
(C) I do it like a gentleman, gentleman, treat you like a gentleman.
(X)You got it going on
(B)You だから冷たい目をやめて
誰にだって優しい人は 信じられやしない?
見る目がないなあ 見る目がないのに
歌い出しはベッキョンです。
軽やかで、かわいい旋律の曲にふさわしく、とても楽しげに歌っています。あざやかな原色のような、彼らしい声。
好みのタイプを聞けば mmm…
girl like mmm…
ほら「優しい人が好きだ」って言う
次はチェン。
あら? やたら「おすまししている」声で来ましたね。
綺麗な色のフルーツキャンディのような。
ファニーなハミングが挿入されていて、リラックスして、とても軽やかに歌っている印象です。
怖いくらい絡まってるMind
Try try ほどけるまで
シウミンさんは、やたらやんちゃな声。ラップだからっていうのもあるけれど、少年がはしゃいでいるみたい。
Oh, baby baby baby
心を隠している重いコート
脱いでいいよ 持ってあげるよ
見えない荷物も
ここのシウミンさんの声が、すごくかわいくて好き。「さくさくしたクッキー」の声、と個人的に呼んでいます。
どこにもいないのに いないのに
ただの軽い男と見分けがつかないの?
——サビに行く前に「タメを作るための」メロディ。
この3人で歌うとき、「初回のサビ前のタメ」パートは、チェンに割り振られていることがすごく多いです。
ここは特に、チェンが本来的に持っている、「ロマンティックヴォイス」が映えるような、そういうセンチメンタルな旋律です。
それをまた、チェンチェンが、チェンチェンらしい甘い声で、かわいくかっこよく歌い上げちゃってくれています(わりと、泣きそうになります、私)。
I'm gonna treat you like a gentleman, gentleman
Treat you like a gentleman, gentleman
あなたにそっと ひざまずいて
次から次へと差し出す愛を
Gentleman, gentleman
Do you like a gentleman, gentleman?
その手で受け取って
エスコートしてあげる
初回のサビはベッキョン、そのバトンを受け取るようにチェン。
ベッキョンはベッキョンらしい、あたたかみのある声で、チェンはチェンらしい、きれいに澄んだ声をあまく響かせています。
私は、このサビのメロディが好きで好きで、たまらないんです。
「gentleman, gentleman」を繰り返すところ、「受け取って」の最後の高い音だけ3人ともファルセットを使っているんですが、私はベッキョンとチェンのファルセットが繰り返されると、無条件に心が震えます。
「琴線に触れる」という表現があるけれど、まさしくそんな感じ。
自分の胸のなかに、弦楽器のようにストリングスが張られていて、それをこのふたりのファルセットで、かき鳴らされてしまうような感覚なんです。
でも、そのサビのチェンの最後の歌声に、間髪入れずに「2番歌い出し」のベッキョンの声が切り込んできます。
(▲「あみだで世界旅行」製作委員会のベッキョンくん♪ かわいい♪)
Uh 高いヒールの靴で
Uh 気を抜けばふらつきそうな
毎日をひとり歩くのは
ねえツラいでしょう Take a seat wooo(←これ、シウミンさんですよね? チェンくんじゃないですよね? ナニげ、ベッキョンくんだったりして?)
——このパートは、かなりコミカルに歌われていて、すごくかわいい。大好き。
Oh baby baby baby
その瞳を隠している 黒いレンズ
そっと取って もっとよく見て
僕のすべてを
どこにもいないのに いないのに
過去のダサい男と重ねているの?
——そして、2回目の「サビ前のタメ」のメロディは、ベッキョンです。
(このパターンも、CBXではすごく多い。というわけで必然的に、2回目のサビがチェンに回る。)
この箇所を歌うベッキョンが、すごくいい。
初回のチェンだって素晴らしいのですが、ジョンデともまた違う、ベッキョンの持ち味の、ちょっとせつなさを感じさせるような声で、それがすごくいいんです。
▼そして、チェンに回ってきた2回目のサビ。
I'm gonna treat you like a gentleman, gentleman
treat you like a gentleman, gentleman
あなたにそっとひざまずいて 次から次へと差し出す愛を
——きれいで、ほんとうに甘い声。
ああ、これが「EXOの宝物」の声ですよねえ……
甘くて澄んだ、こういうロマンティックな声を出せるのが、キムジョンデなんですよ。……
Gentleman, gentleman,
Do you like a gentleman, gentleman?
その手で受け取って エスコートしてあげる
——チェンから歌のバトンを受け取るのは、シウミンさん。
ここのミンソクさんのファルセット、しうぺんさん、どういうご感想を持たれました?
私は「きゃ。シウミンさん、エロかわいくて(←恥ずかしいから反転♡)、大変なことになっている!」と思いました(苦笑)
いまは恋が 怖いのならば
僕にA to Z まかせてほしいよ
Wooo Yeah Yeah Yeah Yeah
And I'mma do it like
I do it like a gentleman, gentleman,
treat you like a gentle man, gentleman
——この「まかせてほしいよ」以降を聞くたび、いつも思います。
ちっきしょー、ベッキョンがチェンから「最高の聴かせどころ」をもぎ取っていっちまったぜ!——と。
*
この曲のパート割りの特徴だと思いますが、「歌詞の意味が続いているのに」「歌い手が変わる」ということが、かなり頻繁に起こっています。
「見る目がないのに 好みのタイプを聞けば」
「重いコート 脱いでいいよ」
「ふらつきそうな 毎日をひとり歩くのは」
「黒いレンズ そっと取ってよく見て」
——とかいう感じなんですが。
メロディという観点からの「切れ目」で歌い手が交代するのですが、歌詞の意味は、旋律の切れ目をまたがって続いていきます。
そのせいで、これらの箇所は、「ひとつのセンテンスを、2人で力をあわせて歌った」ように耳に届くのです。
ところが。
ここだけは「ベッキョンが、チェンから歌のバトンをもぎとった」ように聞こえます。
「僕にA to Z まかせてほしいよ」
ここは、「歌詞の上での意味」はつながっているのですが、メロディの切れ目ではあるので、ここでチェンからベッキョンにバトンが渡されるのは、ある意味、当然ではあります。
でも、「まかせてほしいよ」は、次の「Wooo Yeah Yeah Yeah Yeah」と一続きになっています。
そして、ここから続く、「ファルセットでなければ歌えない、高音が魅力的に響き続けるパート」を、(チェンではなく)すべて、ベッキョンが歌うのです。
ベッキョンのハスキーな声のファルセットは、無条件に魔力を秘めています。
はっきりと男性の声だとわかるのに、「性別を越境している」ように、そのくせ「非常に性的な存在」の声として耳に届きます。どうしていいかわからなくなるくらいの、したたるような魅力をたたえているのです。
早い話、私はベッキョンのファルセットが好き。もうたまらなく、好き。
ふるえるようにして彼の喉から繰り出されてくるあのハスキーな声が、結局のところ、私をつかんで離してくれない、のです。
チェンが歌ってもよかったパートだと思うのですが(実は冒頭に挿入されている「サビ提示」部分と同じメロディなので、チェンは「つかみのファルセット」をまかされているわけですが)、ベッキョンが歌っています。
そして、このベッキョンの歌声が、ほんとうにすばらしいものとして響くので——ああ、チェンから奪ったバトンだけれど、やっぱり、ベッキョンが歌って正解だったんだ、と聴いている私は納得するのです。
Cause babe, I got it all
I'm gonna treat you like a gentleman,gentleman,
treat you like a gentleman, gentleman,
あなたにそっとひざまずいて
次から次へと差し出す愛を
gentleman, gentleman,
Do you like a gentleman, gentleman?
その手で受けとって エスコートしてあげる
——楽曲の最後は、サビを歌うチェンの声で締められます。
彼の声とともに伴奏も終息して、ぱたん、と本のページを閉じてしまったような終わりかた。
だから聞き手の耳の奥には、チェンの声が余韻として響き続けてしまうのですが。
(この写真、すごくすごく好き。3人がそれぞれ、ほんとうに彼ららしい表情をしていると思う)。
イヤフォンを耳につっこんで、無限ループでこの曲を聴きながら、「ああ、この3人の『signature』が、すごく強く、この歌のなかに表れ出ているなあ」と、私は何度も考えていました。
——「signature」(シグニチャー)というのは、「sign」(サインする)の名詞形で、「署名」という意味の単語なのですが、実は、もう少し別の意味もあります。
「芸術作品上に表れ出た、その作品を作り出した作者が独自に持っている特徴」という意味で使われることがあるのです。
たとえば絵のタッチだとか、構図の取り方などに、「その作者しか持ち得ない」ような、ユニークな特徴があったとして。
その絵を見たときに、「ああ、このタッチがあるから、これを描いたのは、Aという画家に違いない」というように、見ている者にはっきりとわからせるような、そういう特徴のことを、「signature」といいます。
シウミンならシウミンの、ベッキョンならベッキョンの、チェンなら、チェンなりの。
声そのものの特質、声を歌にのっけていく、そのやりかた。
そういった彼らの個性が非常に強く、そして、とても魅力あるものとして、この楽曲のなかに立ち表れていて、その個性が、非常に巧みなかたちでアンサンブルとして組み合わさっている。
どのパートも、「彼がこの声で歌うしかなかった」、そんな組み合わせかたで。
3人のジェントルマンたちの、3つの「signature」。
その精巧なアンサンブルが、私をどうしようもなく夢中にさせているのです。
(この記事は「CBXに夢中!」34・Chen36・Baekhyun32・Xiumin31です)
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★MV「Horololo」についても書いています。こちら!▼
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