(この記事は、 オニュのプレゼント。(上)【SHINee World the Best 2018 〜FROM NOW ON〜】東京ドーム2018.02.26 から続いています。お読みでない方は、まずそちらを読んでくださると嬉しいです)
4『Diamond Sky』・ひとつの理解・5本のスタンドマイク
『Diamond Sky』のパフォーマンスについて書きます。
『FIVE』の最後に収められている、私の大好きな曲です。
このパフォーマンスの歌声は、ステージの4人と、ジョンヒョンの録音された声で構成されました。
そして、この曲のとき、バックスクリーンに映し出されていたのは、現在の4人と、(おそらく)アリーナツアーで、この曲をパフォーマンスしていたときの5人の映像です。
大きく笑う「あのときの」ミノと、今の沈痛な表情の、リアルタイムのミノが並んで映し出されます。
楽しそうな「10ヶ月くらい前の」オニュの映像と、今、私から20メートルくらい離れたステージ上の、一生懸命な顔のオニュ。
こぼれんばかりの笑みを浮かべる「その当時の」テミンと、真剣な表情のテミン。
観客にファンサしながらチャーミングに笑う「あの頃の」キーと、涙を流しながらステージにいる今のキー。
そして、とても明るい笑顔で、この曲をパフォーマンスしているジョンヒョンの映像。
ジョンヒョンだけ、今の映像がありません。当たり前なのですが。
「ああ、この歌をステージで歌ってるとき、5人とも、みんなすごく楽しそうだったんだなあ」「みんな、素敵な笑顔」「ファンに語りかけるように歌えることが、ほんとうに嬉しそう」
——そう思うと、また涙があふれてきます。
そして、この「5人それぞれの過去の映像」と、今、ステージにいる4人の表情のアップを見比べていったとき、私はひとつのことを理解したのです。
私が好きだった「SHINee」は、もう過去形になってしまったことを。
東京ドームで見た4人は、全員、ダンスも歌も完璧でした。衣装も超絶決まっていて、あらゆる面で、文句なくかっこいいし、かわいい。
日本語MCのフルーエントさも相当なものです。
この大きな舞台、これだけの観客、この大がかりなセット。
それにまったく負けない力を、この4人は十二分に持っていると思いました。
そして、このステージを成功させるために、スタッフさんも、メンバーも、どれだけ大きな努力を重ねてくれただろうかと思うと、ほんとうに心からの拍手と感謝を送りたい気持ちになります。
でも、このコンサートで見たSHINeeは、私が会いたかったSHINeeではないのです。
私が会いたかったのは、楽しそうな、嬉しそうな笑顔の5人だったんです。
その幸福そうに輝く彼らが、すばらしい歌とダンスを披露してくれる空間に、参加したかったのだと、今さらのように気づきました。
——そんなこと、東京ドームまでわざわざ行かなくても、わかりそうなものですが、私はきちんと認識することができませんでした。
4人が一生懸命パフォーマンスしてくれている空間で、Qと二人でステージを見て、何度も流れる涙をぬぐわないと、私が大好きだったものが過去形になってしまったことに気づけずにいたのです。
*
2回目のアンコールがありました。
ステージにあがってきた4人は、白いスーツ姿でした。そして、赤いバラを、胸に一輪さしています。
ステージにあったのは、5本のスタンドマイクです。
そして、その中央のマイクにだけ、あらかじめ、赤いバラが一輪、さしてあります。
5つのスポットライトが、天の上からさす光のように、ステージのマイクの上に落ちています。
新しい曲だったのと、実は、私自身が相当に泣きじゃくっていたので、あまりよく覚えていません(ごめんなさい。みんな一生懸命歌ってくれたのに)。
覚えているのは、ジョンヒョンの声が流れたパートで、誰も使うことのない中央のマイクを、隣に立つミノが体をそちらに向けるようにして、見ていたこと。
そこに誰かが立っているかのように。
ミノは、ジョンヒョンの歌声にあわせて一緒に唇を動かして歌っていました。
それから、歌い終わった4人が、そっと自分の胸につけられていた赤いバラを外して、自分たちのマイクにそれぞれさしたこと。
5本のマイクに、赤いバラが咲いたようになったな、と思ったこと。
5 プレゼント
オニュ。
あなたの声を実際に聴きたいという願いを、私はかなり長いこと持ち続けていました。
それが昨日、かないました。
表舞台から遠ざかっていた期間があったのに、あなたの歌声はまったくその美しさ、やわらかさ、純粋さを失っていませんでした。
CDで繰り返し聴いていたときよりも、数歳上になっている現在のあなたの歌声は、大人の深みと表現力を持っているぶん、もっと確かな力をもったものとして私の耳に届きました。
涙を流してしまう場面があったのに、一度も声をかすれさせたりしない、そういう高いプロ意識にささえられたあなたの歌声は、ほんとうにあたたかく、やさしく、すばらしいものでした。
それを、日本のファンである私たちに届けてくれて、ありがとう。
あれだけのコンサートを準備してくれて、がんばって成功させてくれて、ありがとう。
心から感謝しています。
*
実は、8月の1件以来、私があなたのことを思う気持ちには、かなりの分量で「腹立ち」と「悔しさ」が混じっていたのです。
私が大好きな「SHINee」という存在を、よりにもよって、私がメンバーのなかでも最も好きなあなたが傷つけてしまったと感じたから。
12月5日に発表された、あなたの「オンユからファンのみなさまへ」というメッセージを見たときは、今度は心配になりました。
あなたが書いた文字を見て、あれだけの大きな波紋を呼ぶような事件を引き起こしてしまって、あなたが精神的に追い詰められていやしないかと。
その少し後に、あなたのお誕生日が来て、その翌日のことでした。
日本の2大ドームで、4回にわたるSHINeeの公演が発表されたのは。
12月15日に日本公演が発表されてから、18日の夜9時40分ごろに第一報を知るまで、私は、あなたたちが、「あなたがいなかった4人のコンサート」の記憶を上書きしてくれるのだろうと思っていました。
5人揃ったステージで、もう一度、私のことを魅了してくれるはず、幸福な気持ちにしてくれるはずだと。以前と同じように。
そうしたら、その光のような記憶を胸に抱きしめて、あなたが芸能活動から遠ざかる期間のあいだを、期待とともに過ごせるのだろうな、と本気で信じていました。あの2日半の間だけは。
けれども、もう、それはかなわないことになってしまったのだ——と昨日、あなたたちのコンサートに参加して、ようやくわかったのです。
ほんとうに悲しいことだけれど、私が好きだったSHINeeは、過去形になってしまったのです。
それは、誰が悪い、何が悪い、とかじゃなくて。
あなたが悪いのでも、メンバーの努力が足りないのでも全くなく、ましてや、たったひとりで苦しんでいて、遠いところへ行ってしまったジョンヒョンが悪いわけでもないのです。
ただ、どうしようもなく、「5人のSHINee」は過去形になってしまって、それが覆されることはないのだと。
*
ずっと長いこと、「実際にこの耳で聴いてみたい」と願い続けて、昨日、ようやく聴くことができた、あなたの歌声は、CDで繰り返し聴いていたとおりの、いいえ、それ以上の、ほんとうにすばらしいものでした。
あなたの活動名のように、温かく、流れるような歌声です。
そして、もう一つ、気づいたことがあります。
あなたの歌声は、悲しみに満ちた心に寄り添ってくれる、そういう優しい声なのです。
傷ついたとき、淋しいとき、涙があふれてとまらないときに、あなたの声は、その心を慰めてくれる、あたたかな力を持っています。
あなたたちのコンサートで、何度も目を拭うほど泣きながら、ああ、あなたの声は、しみじみとあたたかいなあと思いました。
涙を流す心にやさしく寄り添って、悲しみをやわらげてくれるような力を持つ、そういう歌声なのだなあ、と。
12月18日以来、私は、SHINeeのCDをほとんど聴けなくなっていました。
音楽や声というのは、ときどき、すごい力を持っているので、怖いです。「SHINeeのCDを聴いていたときの自分の幸せな気持ち」が、ものすごい勢いでフラッシュバックしてきて、その幸せな記憶は、ジョンヒョンがいなくなってしまった今の悲しみを、強烈に増幅させて、その悲しさのなかに閉じ込めてしまうのです。——私はそれが怖くてたまりませんでした。
でも、昨日の東京ドームのコンサートに出て、そして、さんざん泣いて、「ああ、5人のSHINeeは、もういないんだ」と理解してからは、むしろ逆に、あなたたちの音楽を聴き返したくなりました。
家に帰る道すがら、すぐに「I’m your boy」を聴いてみました。
何度も。何回も。このアルバムを聴きはじめた頃のように。
「わー、みんな若い!」今と比べると、あなたも含めて、全員の声が少年のようです。(特にミンキー。いえ、ジョンヒョンも、テミンもあなたの声も、笑っちゃうくらいに「若い」です)。そんなふうに笑ったり、ときどき涙ぐんだりしながらも、私は「I’m Your Boy」を聴き続けました。
「Down Town Baby」「Lucky Star」「Colors of the Season」——コンサートでも聴いた、たくさんの私の好きな曲たち。
この曲を聴きはじめたころの、つまり、SHINeeという存在を知って、好きになっていったころの気持ちをありありと、なつかしく思い出しました。
ジョンヒョンがいなくなってしまった悲しみのなかに、閉じ込められてしまうことなく聞き返したのは、あの日から考えてみれば、初めてのことです。
そして、そのときみたいな「ニュートラルな気持ち」に戻りたいと、強く願ったのです。
8月のあなたの事件以来、今、私がSHINeeについて考えるときには、ものすごく複雑な思いが渦巻くようになってしまいました。
あなたの起こした一件、4人だけのコンサート。
それから、一人で遠い場所に行くことを選んで、そして本当に行ってしまったジョンヒョン。
彼の葬儀で見た、やつれて髪がぼさぼさのあなたの姿、まぶたを腫らすほど泣いていたキー、ミノが剃り残していた髭、表情を失くしてしまったようなテミン。
——悲しみ、涙、やりきれなさ。
SHINeeがここまで大きな存在になったときに、いったいどうして、という悔しさ、せつなさ、さびしさ、嗚咽。
そういうSHINeeに対する「好き」以外の気持ちを、いったん、リセットしたいと思いました。
それらを、いったん全部洗い流して、そして、ニュートラルな気持ちで、もう一度、今の、「現在進行形のSHINee」に向かいあいたいなと。
*
最近、コンサートというのは、何かのプレゼントをもらえる場所なのだなということに気づきました。
たくさんのファンが集まる、音楽とダンス、歌声と光、熱狂に満ちたあの空間へ行って、帰ってくるときには、必ずなにか素敵なものを日常生活へと持って帰ることができる、そういう場所なのです。
昨日もらったプレゼントは、「SHINeeの音楽を聞き返す力」でした。
そして、「現在進行形のSHINeeに向かいあおうと思ったこと」でした。
そのプレゼントをくれたのは、オニュ、あなたの歌声です。
あたたかな光で抱きしめてくれるような、あなたの優しい歌声で、私は、そのプレゼントを受け取ることができたのです。
(2018.02.26)
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