EXO・MV「Tempo」評②
この記事は、EXO・MV「Tempo」評 ① スホ・ベク・チェン・チャニョル・カイ から続いています。もしよろしければ、そちらから読んでくださると嬉しいです。
夜ふチョコはこれまでにも、EXOくんたちのMV評(「評」というか、単なる素人ファンの感想文ですよ? ファン歴の長い方や、音楽やステージにもっと造詣の深い方がお読みになったら、噴飯ものの箇所がたくさんあると思うのだけど……苦笑)を書く際、「優勝」「準優勝」「審査員特別賞」「敢闘賞」などの、ランキングづけをしてきました。
夜ふかしチョコレートの脳内で、審査委員長をはじめ、歌唱力評定員、ビジュアル審査員、スタイリング評議、議事録書記、お菓子配布係など、錚々たる顔ぶれで白熱した論議を繰り返し、厳正なる審査の上で、それらのランキングを決定するのですが。
つまり早い話が、それらの「順位づけ」は、純粋に「夜ふチョコひとりの主観」に基づいています(苦笑)。
だから、何が言いたいのかというと、「皆さま、本気にしちゃダメですよ!」ってことなんですが(笑)。
思えば、この優勝だの準優勝だのというランクづけを始めたのは、Qとの会話がきっかけだったと思います。
彼女が北の大地で女子高校生をしていた頃、EXOくんたちについて、源氏物語の「雨夜の品定め」的にさまざまな萌語りをしていたのですが、そのときに
Q「今回の優勝は〇くんだな」
私「それで決まりだ。そして準優勝は△くん、敢闘賞をXくんの手に」
Q「いや、〜くんの頑張りも、ここはひとつ、ぜひ評価していただかんと」
私「よし、〜くんには審査員特別賞だ!」
——的な言い方で、語っていたのです(アホです・笑)。
彼女が東京で大学生をするようになってからは、EXOくんのアルバムやMV、ステージなどについて、ラインや電話で語りあうようになりました。
どうも彼女から、私は、「いい金ヅル」だと思われている節がなきにしもあらずなのですが(笑)、(「CBXのライブDVD買うんでしょ?」「もちろんですよ♡」「じゃー今度家に帰ったら見ようっと。あと、あみだのセルフィーブックも買った?」「買ったよーん♪」「じゃ、家に帰ったら見して♡」という平和な会話が繰り広げられているのです・苦笑)、彼女にしても、私は「大切な話し相手」なのかもしれません。
Q「だって、Kポ仲間の友達と話すときは、こんなに濃いレベルでEXOを語らないもん」
私「ふうん?」
Q「友達と話すときは、普通に『ギョンちゃんかわいかったねー』『ねー』『カイくんだってかっこよかったよー』『ねー』って感じ」
私「我々の会話も、まあ、所詮はその程度のことしか語ってませんよ」
Q「いや、違うね。自分のお母さんを巻き込んで、一緒にコンサート行ったりしてる子も友達にわりといるけど、あなたほど気合が入ってるママは、なかなかいないよ」
——いえ、別に、さほど気合は入ってないのですけれどね。
熱く、暑苦しく萌えを語ってしまうのは、それは私がオタクだから、ですよ、Qちゃん。そして、あなたも立派なオタクですけどね(苦笑)。
*
さて。
今回のEXOのMV「Tempo」の評を書くにあたって、たぶんこのMVを20回以上は見ていると思いますが(え? 少ない? でもまだ2日目だし、カムバステージも見なきゃいけないから、社会人だとそれが精一杯。これからまだもっと頑張る♡)、これから述べるメンバーは、かなり早い段階から優勝争い候補にあがっていました。
初見の時点で、すぐに強く胸をつかまれ、2回目に見たあたりで、彼の素晴らしい存在感に息を飲み、「このひと、今回、すごいわ。優勝候補だ」と断定しました。
実は、そのメンバーには以前のMV評『Universe』の中で、夜ふチョコは「優勝」を与えています。
その記事のなかで、私は、彼の優勝の評価理由として、「(MVのなかで)最後に美しい微笑を見せつけた以外、ほとんど何もしていない。にも関わらず、その度肝を抜くほどの美青年っぷりに対して」と書いていました。「持ってけドロボー」ともつけ加えました(苦笑)。
今回、彼に対してとても高い評価を与えたのは、そのときとは、まったく理由が違います。
むろん、彼の美青年っぷりは健在なのですが、今回、その存在が光り輝いていたのは、彼がこれまで重ねてきてくれた努力が、大きく開花したからだと思ったからです。
7. あの日、きみに蒔かれた音楽の種子
「Tempo」の前半のかなり早い段階で、「セフンのラップのシークエンス」が登場します。そして、それがとても長い。
今までなら、セフンのラップは、チャニョルと二人の掛け合いのようにして、もっと短いフレーズで構成されていました。けれども、「Tempo」では、二人が独立して、今までになく長いスパンで、それぞれのラップを聞かせてくれているのです。
その理由は、素人目の私にも明白です。
セフンのラップの力が「長いラップを(チャニョルに頼ることなく)任せられるくらいに」大きく伸びてきているからです。
私は、とあるアルバムのとある曲が、あまり好きではなく、わりといつも飛ばしてしまうのですが(すみません)、その理由を正直に申し上げると、「聞いていて、ちょっとセフンがかわいそうすぎる」というものなのです。
私「この曲ねえ。……メロディも私の好みから外れているんだけど、とにかくセフンがかわいそうだ。チャニョルと比べて、あまりにもその差がはっきりとしすぎてるんだもん」
Q「チャニョルの音楽的ポテンシャルは結構高いよ。あいつ、ドラムもギターもピアノも、楽器全般やるじゃない。読譜はもちろん、コード進行とかも理解できてる。音楽的素養がセフンたんと違うんだよ」
私「それにしたってさー。もうちょっと何とかならんか(涙)! これはさー、制作側の構成ミスだよ。これ、『歌うま組』と『歌・そうでもない組』に分けて、4人で1曲を担当させたでしょ」
Q「『歌・そうでもない組』って、あなた・笑。 いや、ま、言いたいことはわかるけども笑。 ——あれはチャニョルがいくらがんばっても、それが裏目に出ちゃってんだね。だって、ニョルが頑張れば頑張るほど、セフンとの差が明らかになっちゃう」
私「4人で1曲担当させたから、1人当たりのパートが増えて、その分量だとセフナが持ちこたえられない。だから、あのメンバーの分け方がまずいんだよ。ニョル+ベク+シウ+セフナの4人と、チェン+スホ+カイ+ギョンスとか、そんな感じで分けて、歌唱力を均等にふりわけてれば、話は違ったよ〜〜〜!」
——とまあ、「非常に余計なお世話」なんですが、そういう感想を抱いてしまっていました。
(それも私の個人的な感覚によるものではあるので、違う感想を抱いた方も、もちろん、いらっしゃると思います。たぶん、どの楽曲について語っているか、皆様すぐお分かりだと思うし、きっと、あの曲がお好きだとおっしゃる方もいらっしゃると思います。こんな書き方して、ごめんなさい)。
(セフナがいるバーの店内は、チェンとチャニョルの尋問室に面しているという設定。セフナの後ろに映り込む背中は、チェンのもの。彼はそこから、尋問室にいるチャニョルを見ている)。
2017年2月に行われたマレーシアのコンサートで、ステージのセフンは、こんなコメントを口にしました。
「1年前から、歌の個人レッスンを受けています。もしかしたら夏頃、皆さんにその成果をお聞かせできるかもしれません」
——彼がそう口にしたことで、「次のカムバは夏頃か?」(『The War』のこと)とファンの方の間で噂が飛び交いました。ご記憶にある皆様もいらっしゃるでしょう。
私とQの間でも、「ほほう、次は夏ごろかー」「でも、夏って言ってもいろいろあるじゃん? 6月から8月ぐらいまで夏じゃん!」「何月なのかしらねえ」みたいな会話を交わしたことを覚えています。
でも、その後、「セフンが1年前からずっと、歌の個人レッスンを受けていた」という事実が、思いがけないほど強く私の心に残りました。
日常の端々で——たとえば、風呂場掃除をしているときなどに(笑)、一心不乱にスポンジでごしごしバスタブをこすりながら、「そうか……そうだったのか」と考え続けている自分がいるのです。
そうか。セフナは、1年も歌の個人レッスンを受けていたのか。
そうだったのか。
小学6年生のときに、ソウルの街角でSMのスカウトの女性から「うちのオーディションを受けてみないか」と声をかけられたのが、この世界に入ったきっかけだったというセフンは、その数年後にデビューチームの一員として選ばれたときに、「自分は、歌唱力で、この中に選ばれたわけではない」ということを、もちろんはっきりと認識していたでしょう。
そしてもう少し言えば、同じKのグループで、「歌唱力の水準をクリアできていない」のは、彼一人であったことも理解していたでしょう。——ベクとギョンスは言うまでもなく、スホとチャニョルの歌声は、「戦力」として、十分に頭数に入れられています。「ダンスのカイ」だって、とてもきれいな声で、ちゃんとメロディを歌います。
そして、そういう6人のなかで、デビュー時、一番年下のセフンは、まだ高校生だったのです。
単なる一ファンの私から、とても遠い場所にいるセフンの心の中が、その当時、どんなものだったのか、彼をとりまく周囲の状況がどういうものだったのか。
実際のところを知るよしもないですし、単純に推測してしまうのも、あまりにも僭越がすぎるというものでしょう。
ただ、普通のその年齢の青年よりも、彼は苦しいことや悔しいこと、つらいことを、大きく、そして深く経験しているんだろうな、ということは確かだろうなと思います。それと同じほど大きく深い幸福や喜びを、彼が得ているのと同じ確かさで。
*
マレーシアのコンサートで、「1年前から歌のレッスンを受けています」とセフンが口にした、その1年前の2016年の2月、EXOは、皆様ご存知のとおり、「寝る時間もないくらいの売れっ子アイドル」でした。——いえ、ただの「売れっ子」ではないですね。その前に「国際的な」がつく、KPOPのショウビズシーンにおいて、トップグループに数えられる存在になっていました。
そんな殺人的な忙しさの中にいる彼が、「歌の個人レッスンを地道に1年間も受けていたこと」を知って、しみじみと、ああ、セフンの心は、とても健やかなんだな、と思いました。
苦しいことがあっても心を腐らせることもなかったし、華やかな場所に立ったとしても奢ることのない、とても健やかな心根を持った青年なんだな、と。
最初に「お? セフナ〜、やるじゃないか〜♡」と私が嬉しくなったのは、『Electric Kiss』で彼のラップのシークエンスを聴いたときです。
こういう言い方をすると、一見、バカにしているように思えてしまうかもしれないのですが、「聞いただけで、即座に、セフナが、ラップで何を言っているかが、よくわかった」のです。
これは私の方に問題があるお話ですが(苦笑)、昭和生まれの私の耳には、日本人の歌手が歌ったとしても、「ラップが何を言ってるのかわからない」ということが往々にしてあります。特に英語の歌詞と混ぜられると、かなり混乱します。
でも、『Electric Kiss』のラップは、セフンがどんな言葉を歌ったのか、ぱっと耳で聞いて、すぐさま理解できたのです。——彼にとって、母国語ではない日本語で、(昭和生まれの)私に、すんなりと歌詞を理解させるような、そういう力が、もう彼にはしっかりと備わっていたのだと思います。
しかも、「チャニョルのラップと比べて遜色ない」というレベルではなく、「互角に戦える」——いえ、むしろ「チャニョルのラップに勝っているんじゃないか」とさえ感じたのです。
『エレキス』のセフナのラップは、ぱしん、ぱしん、ぱしん、と小気味よく、「決めるべき言葉」が、「決めるべき瞬間」に、そして「決めるべき音」で、次々に決められていく、という印象でした。
あるべきリズムで、あるべき音で。
ぱしん、ぱしん、ぱしんと、セフナが放った歌詞の言葉が、聴いている私の中に飛び込んでくる。
——おおー、やったじゃないか。すごいじゃないか、セフナ。
こんなに私の心を打つラップを歌ってくれて、きみがその努力を実らせてくれて、私はすごく、すごく嬉しいよ。
Q「マンネ、今回、すごくいいとこもらった。(楽曲の)パート的にもMV的にも、めっちゃおいしい箇所」
Q「SMは、セフンで(EXOを)売ろうとしだしたのかも。いや、そうかも」
——Qは、ラインでそう書き送ってきました。
直接的な形で賞賛しているわけではないのですが、この言葉を読めば、今回、セフンがもたらした存在感が、Qの胸にも強く響いていることがおわかりいただけると思います。
「Tempo」の前半で、非常に長いシークエンスを与えられているセフナのラップ。
ステージでのパフォーマンスでも、その部分は彼の存在がクローズアップされるように構成されていますし、MVでも彼の存在が中心的に描かれています。たった4分少々のMVのなかで、わりと長く取られた「めっちゃおいしい箇所(by Q談)」の、その主人公として大抜擢されているわけです。
そしてセフンは、その「大抜擢」に対して、これ以上ないくらい格好よく、その大役をキメてくれたのだと思うのです。
黒いタートルネックのセーターに、カーキ・ブラウンのスーツ。
そんなエレガントな大人の服を着こなしたマンネが、バーとおぼしきセットで、琥珀色のグラスを傾けています。
強い視線で、しっかりとカメラを——私たちを見すえて。
セフンのラップは、ぱしん、ぱしん、ぱしんと決めるべき言葉を、フレーズの最後の「tempo!」にいたるまで、決めるべき音で、決めるべき瞬間に、彼が私たちの心へ投げ込んでくるかのようです。
セフナ、もう「持ってけドロボー」なんかじゃないよ。
今回のMVで、私は最高にカッコいいEXOのマンネに心からの賞賛と拍手を贈る。
それはきみの努力が、それに値するからなんだ。
(この記事は「tempo」12です。)
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(画像はお借りしています。ありがとうございます)
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