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【セフン+ベッキョン】胸の中のコンパス(前篇)【セフナの青春日記・第3話】

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★このページは、『セフナの青春日記』(全12話)のうち、第3話めです。

 セフンが22歳の誕生日を迎える頃、という設定のファンフィクション。歌が上手くなりたいと決心した彼が、EXOのヒョンたちと対話を重ねていきます。

 

 ▼第1話はこちらです♪

 

 

 

 ミンソクから背中を押してもらった格好で、セフンは、まずはマネージャーに歌の個人レッスンを受けたい旨を告げ、会社の上層部とかけあってもらった。

 先生も紹介してもらえた。

 音楽大学の非常勤講師をしている30代後半の男性で、エンターテイメント系の歌手の歌唱指導の経験も多いというふれこみだった。

 

 1回90分のレッスン料としてその先生に支払われる額は、正直、「うわ」と思うようなものだったから、ミンソクからのアドバイスが、いかに有効なものだったかを知った。

 もちろん、今のセフンの収入なら、問題なく支払える額だとしても、だ。

 それほどの金額を、会社が自分一人のためにかけてくれている、ということなのだから。

 がんばらないと。

 

 書面による契約を交わして、レッスンを受けることが決まり、セフンは改めてマネージャーに頭を下げた。

 

「あの。……できれば、僕がこのレッスンを受けることを、メンバーとか周囲のスタッフさんたちに、しばらくの間は、内密にしてもらえないですか?」

「え。──なぜ?」

 マネージャー氏には、セフンが抱いている、この微妙な「プライドと向上心のせめぎあい」が理解できないようだった。

 

 「歌唱力」で選ばれたメンバーと、それ以外のパフォーマンスの力で選ばれたメンバーと。

 このEXOというグループには、その2組が混在している。そして、その両方を高い水準で満たしているメンバーもいる。

 そんななかで、最年少の自分だけが、あきらかに「歌唱力」の項目で大きく下回っている。

 その状況だけですでに、プライドというものが、しくしくと痛むものであるのに、そのうえさらに、そんな自分が「歌唱の個人レッスンを受けている」と、彼らに知られるのは。

 

 治りきらない傷口に、さらに塩を塗りこまれるような気がする。

 子どもっぽい態度だとは思うけれど。

 

「レッスンが、軌道に乗るまで、でいいんです。……『できれば』で、いいですから。あんまり、みんなに知られたくないっていうか」

 

 「なぜ」と理由を問われたのに、理由を答えることなく、つよく自分の意見をおしつけるような物言いになってしまった。

 

 俺にはダンスがあるから、と開き直るほどのふてぶてしさを、まだ、セフンは持ち得ていない。

 なにせ、あれほど踊れるカイだって、きれいな声でメロディを歌うのだ。

 

 足りない部分を向上させていくためには、レッスンを受けるという「行動を取る」しかない、と、ジョンデの姿を見て決心したのだが、同時に、今、自分のなかでめばえはじめたこの気持ちは、まだ育ちきらずにとても弱い、「芽」でしかないのも感じている。

 そんな状態で、年上のメンバーの誰かから、心が折れそうな一言を言われたら、その芽はあっという間に枯れて、消えてなくなってしまう。

 

 年上のメンバーの誰か──たとえば。

 

 たとえば、ベッキョニヒョンとか、ベッキョニヒョンとか、ベッキョニヒョンである。

 

 ──あのひとが、悪い心を持った人間ではないのは、長いつきあいの中でちゃんとわかっているのだけれど。

(むしろ、ベッキョンのことは、後輩のなかでも、一番慕っているほうだと思う)。

 ときどき、(セフン相手に限った話ではないが)彼のからかいは、過ぎるときがある。

 いつもなら、ジョークだと受け流せる言葉でも、今、自分の中でめばえかけた向上心は、すごく脆いものだという自覚がある。

 だから、自分自身で。この気持ちを、守ってやらないと。

 

「きみがそう言うなら、なるべく、その意向に沿うようにはするけど」

 マネージャーの彼は、そう言うと、すこしずり落ちていた黒縁の眼鏡を、指で、つっと位置を直してからセフンを見た。

 その顔に、意外なほどの渋面が浮かんでいる。

「でもね、そういうの、あんまり、いい考えじゃないと思うな、セフン」

 

「……そうでしょうか?」

「うん。そういう考えは、グループの中の空気を悪くしかねない」

 どうしてそう思うのか、理由をきちんと告げずに、その意見だけを押しつけてくるような言い方を、マネージャーのほうも、セフンに対して返してきた。

 

 噛み合わない2人の間の空気が、どんよりと重たい感じになったものの、そのときは、時間が差し迫っていて、そこで話が打ち切りになってしまったのだけど。

 

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「──なあ、おまえ、歌の個人レッスン、始めたんだって?」

 

 問いを投げかけられて、テレビ局の楽屋にいたセフンがスマホの画面から目をあげると、目の前に、一番そのことを問われたくない相手が立っていた。

 

 げ。

 もうバレてんの?

 しかもメンバーで、一番、俺をからかってきそうなこのひとに。

 

 金に近い、明るい髪色、まなじりの下がった目、繊細に整った顔立ち。

 普段は不遜に笑っていることの多いベッキョンの顔に、今日は、なぜか生硬とも呼べそうな、若干、硬い表情が浮かんでいた。

 

「昨日、そのレッスンがあったんだろ?」

 そう言いながら、ベッキョンはパイプ椅子をずるずると引きずってきて、セフンの目の前で、ぱかっと広げた。

 椅子の背もたれ部分に体の前面をあずけ、座面にまたがるようにして、彼はそこにすわりこんだ。

 

 向かい合ったベッキョンは、カリフォルニアオレンジみたいな色のパーカーと濃紺のジーンズをあわせていた。

 夏のイメージがある彼の肌の色に、その色はよく似合っていたが、背中に紺色の英字がでかでかとプリントされていて、そっちのほうが大問題だと思う。──「Don’t Get Caught」だと? 

 「つかまるな!」ってさ。……わかってやっているのか、たまたまなのか、知らないけれど。

 

「そうですけど。──誰から聞いたんですか、それ」

「ジュンミョニヒョンから聞いた。そんであのひとは、マネヒョンから聞き出したんだってよ」

 

 ──げ。

 ひどくね? それって。

 

 他のメンバーに言わないでほしい、とマネージャー氏には頼んでおいたのに。

 そうやって口止めを頼むことすら、けっこう、プライドを削られそうな気持ちだったのに。

 最初のレッスンを受けてから、10日間足らずしか経っていない。昨日のレッスンは、まだ3回目だ。

 あの約束を、あっさり、反古にされた、というのか。

 

「ジュンミョニヒョンがさ。最近、セフンがなんかコソコソしてるって心配しだして、マネヒョンにおまえの動向を尋ねたの。

 それで、おまえが歌の個人レッスンを受けてることを聞き出したんだけど、そのときに、『セフンは、このことを他のメンバーに知られたくなかったみたいだから』って聞かされて」

 

 うわ。そっちも、バラされてんの?

 

「そんで、あのひと、めちゃくちゃ落ち込んで」

 

 ──え? なんでそこで、リーダーの彼が、落ち込む?

 

「わざわざ俺のところに来て、ことの経緯を話したあげくに、『なんでセフナは、歌のレッスンのこと、俺たちから隠そうとするんだろう? こっちは、応援したい気持ちでいっぱいなのに。信用されてないんだなあ、俺たち。ベク、どうしてかなあ? 俺、つらいなあ』だと。……何回もそう言って、恨めしそうな顔で俺のこと、じーっと見るんだよね、あのひと」

 

 またがるように逆むきにすわった椅子の背のうえでパーカーの腕を組み、ベッキョンは、その組んだ腕に顎をのっけて、対峙したセフンの顔を、下からすくいあげるように見上げた。   

 

 そのふたつの瞳は、べつだん、からかいの色など浮かべてはいなかった。

 むしろ、セフンの気持ちを懸命に忖度しようとする、真摯なまなざしだったから。

 

 セフンはたじろいで、目の前の彼の瞳を、ただバカみたいに見つめ返していた。

 

 そのとき、椅子の背に置かれていたベッキョンの手が、すっとセフンのほうに伸ばされた。

 え? と思う間もなく、セフンの目を見すえたまま、彼は、ふわりと手のひらでセフンの頰を包んだ。

 

「ごめんな。……レッスンを受けてるの、知られたくなかった相手って、たぶん、俺だよな?」

 

 頰にふれたのは一瞬だけで、ベッキョンの手は、すぐに離れていった。

 

 ときどき、このひとはこういうことをする。

 肩だったり、額だったり、腕だったり。

 つよい親愛の情を示すために、彼は、こっちの体のどこかに、一瞬だけ、ゆるやかにふれる。

 

 無遠慮ではないぎりぎりの地点で、親密さの領域に置かれたベッキョンの手。

 ふれられることで、一瞬、こっちのガードがふっとはずれてゆるみ、心の扉がひらく。

 そのひらいた扉にすべりこませるように、このひとは言葉を送りこんでくる。

 

「俺にからかわれたくないって思ったんだろ? ……せっかくがんばろうとしてるセフンに、嫌な思いさせてたな。ごめんな」

 

 ふざけてばかりのベッキョンらしからぬ真剣な声とまなざし。

 プライドの高い彼が、それを年下の自分の前に投げうって、誠実に謝意を口にしてくれているのだ、と思ったら、ベッキョンの言葉は、セフンのかたくなになっていた心をじんわりと溶かしていった。

 

「──いえ、そんなこと。……ないです、けど」

 

 そう答えたとき、ほんとうに「そんなこと」など、ただの一度もなかったのだ、と心の深い部分で、その事実を認識している自分がいた。

 日常生活のなかの些細な事柄、セフンの不器用さ、共同宿舎時代の散らかり過ぎの部屋(あれはスホにも半分以上責任があると思う)や、そのほかもろもろのできごとは、確かに、何度もからかいのネタにされたけれど。

 

 ベッキョンは、これまでに一度も──ほんとうにただの一度だって、セフンの歌唱について、バカにしたり、からかったりしたことなど、なかった。

 ただ、セフンの意固地に固まっていた気持ちが、「どうせ、俺なんか」と、拗ねて、卑屈になりすぎていただけ、で。

 

 自分の子どもっぽさが恥ずかしくなった。

 はやく、年上の彼らに追いつきたいのに。

 なんだか自分の努力は、空回りしてばかりいる。

 

「俺のほうが年上なんだから、おまえの気持ち、ちゃんと考えてやらないといけなかったのにな」

 

 ベッキョンが重ねてそう言ったとき、ようやく、その言葉に茶々を入れる余裕がセフンに戻ってきた。

 

「どうしたんですか、ベッキョニヒョン。……テレビカメラが回ってもいないのに、あなたがそんな殊勝なことを言うなんて」

「あ? ……ああ」

「明日はきっと、雪が降りますね」

「かもなー」

 

 セフンが冗談を返したことで、はりつめていた空気が、ふたりの間から溶けていく。

 ベッキョンのほうもそれを感じ取ったのか、明るくよくとおる笑い声を響かせた。

 ──もう俺たち、大丈夫、だよな?

 笑ったかたちのベッキョンの目が、そう尋ねているので、セフンも微笑みを返すことで、同意を示した。

 

(このページは、『セフナの青春日記』3「胸の中のコンパス」(前)です。)

 

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