Finally I have met you whom I hadn't met before.
ようやく会えたね。まだ出会っていなかったきみに。
この記事は、EXOチェンのファースト・ソロアルバム「April, and a Flower 」『4月、そして花』(2019年4月1日リリース)について書いています。
アーティストのチェン
この記事を書くにあたって、私は、彼のことを「チェン」と呼ぼうと思っています。
「チェンくん」でもなく、(ふだん私がこのブログでそう呼んでいるように、彼の本名の)「ジョンデくん」でもなく。
この「April, and a Flower」というアルバムを出した彼のことについて書くなら、チェン、という名前に、なんの敬称もつけずに呼ぼうと。
それは、「チェン」のことを、ひとりのアーティストとして扱いたいと思ったからです。
このアルバムにおさめられた全6曲を聴いて(というか、ティザーでアルバムの画像や、トラック・タイトルや、ハイライトメドレーが出始めた時点で)、まず最初に私が感じたのは、「驚き」だったと思います。
彼の「やりたかった音楽」って、こういうものだったのか、という胸を突かれるような思い。
「やりたかった音楽」を、ここまで思い切りよく、「やりきってくる」とは思わなかった、という意外さ。
その驚きは、やがて一つの「理解」へと収斂していきます。
——ああ、そうか。
このアルバムを出したのは、(ボーイズアイドルグループの)EXOのメンバーの1人である「チェンくん」じゃないんだな。
彼のなかにいた(そして、ときおり顔をのぞかせるだけだった)もうひとりの彼、「アーティストのチェン」が、この「April, and a Flower」というアルバムを出したんだ。
蕾だった花がひらいて、明かされなかった秘密がひとつ、明らかになったように。
そういう「理解」が私のなかに生じたからです。
はずれた「勝手な予想」
私は、どうしようもなく「EXOのチェンくん」のファンではあるので、その彼のファースト・ソロアルバムが出ると発表されたときには、内心(いや、内心にとどめておけずに、かなり表に出ていたと思うのですが・苦笑)お祭り騒ぎでした。
非常にアーティスト気質が強いひとなので、「ソロアルバムを出すこと」、すなわち、EXOというフィールドから離れた場所で、自分の音楽をもっと自由なキャンバスに向かって具体化させることは、チェン自身の強い願いでもあったと思うし、長いこと抱えていた夢だったとも思います。
その夢がついにかなったんだ、と、ファンとして、とてもとても嬉しかった。
そして、「いったいどんなCDになるんだろう」と、ドキドキわくわくしながら、いろいろ勝手に予想していました。
たとえば。
①予想1
ま~、5~7曲のミニアルバムで、そのうち「キムジョンデ作詞」が1曲、できれば2曲は入れておいてほしいですね(←これはわりと当たってた)。
②予想2
CDはヴァージョン違いで2種類は出されるかな? (←これは「Kihno キット」があったので、実際には3種。予想を超えていた)
③予想3
ジャケットに関しては、個性的だけどすごくハンサムなひとなんで、「26歳の今」を、めいっぱいきれいに撮ってほしい(悲願)。
どーゆー感じがいいですかね…
(↑これを予想しているとき、たぶん、私、ものすごくニヤニヤしていたと思います・苦笑)
「きれいなお兄さんは好きですか?」的な、「若干フェミニン寄り王子様」感を出そうと思えば出せるひとでもあるので、そういう感じがいいかなー。
いや、26歳のチェンくん、もはや「絶対的男性性」を隠せないわけだから、すぱーんと思いきりよく「かっこいいですから、俺」的な色気を、濃厚な感じで出してきてもらってもいいです。
いやいや、今年は「かわいいチェンチェン」が許されるギリギリの年齢、やや甘めで「僕がきみのボーイフレンドだよ♡」的な感じで攻めてきてくれても、こちらとしては全然かまいません♪
明るい笑顔がとても魅力的なひとなので、笑っている顔のカットもいい。
目を伏し目がちにして、あのまつげの長さを見せつける感じでもいい。
とにかくアルバムの「表紙」となるポートレイトには、「個性的なんだけど、ハンサム」な彼を、SMエンターテイメントさんの力を結集させて、最高に魅力的に撮ってほしい…!
……この予想(というか、チェンくんファンとしての願い)が、もう「キレーに外れてた」。
ジャケットがねえ、もう、「絵」がくるなんざあ、こりゃあ、お釈迦様でも気がつくめえ!(←江戸っ子)
④ そして。
問題の「5~7曲」の中身、肝心の楽曲なわけですが……
オードブル:「Blooming Day」「Love Me Right」的な「ザッツ・Korean Pop Music(SMtown風味)」系1~2曲
メインディッシュ①:「Cherish」「Bye, Babe」的な「王道ポップス」2曲
箸休め:「Watch Out」的な「わりーけど俺、ロッカーだから」的な1曲を、4番目ぐらいに投入
ア・ラ・カルト:「Stay」とか「They Never Know」みたいなインディペンデント系R&B(+「若干の病み」風味)でコンテンポラリーなのを5曲めあたりで。
メインディッシュ②:「Universe」「Diamond Crystal」的な「スロウ・バラード」1~2曲
——てな塩梅で、どうでしょうかね~ふふふ……などと考えていました。
歌い手として、非常に多彩な魅力を持っているひとです。
その魅力を、いろいろな角度から見せられるように、辛口・甘口・砂糖じょうゆ味・塩味・にぎやか系・おすまし系・クール系・スパイシー系・フルーティー系……各種取り揃えた感じのCDになるんじゃないか、と思っていました(注1)。
(注1)「各種取り揃えてみました」的なカラフルCDは、ベクが出すのかもしれない。彼はヒップホップも行けるし、「自分の魅力を何種類も提示すること」に強い拘泥を持つ、エンターテイナー気質のひとですしね。
「さーて、キムジョンデくんはこうきたわけですから、ビョンベッキョンくんは、いったいどういうCDを聴かせてくれましょう??」と期待がかなり高まっているのですが。……(←とQに言ったところ、「カイちゃんのソロ計画は?? 全然続報がないじゃん?」とツッコミが入りました。そーなんですよ、カイくんも水面下で準備中なんだろうけど…ちょっと「匂わせ」してほしい…♡)
彼の「2つの得意球」・抱える「命題」
わけても「アップテンポな王道ポップス系」は、彼の声が本来的に持っている魅力に、もっとも適しているから、たぶん「決め球として」(=タイトル曲として)持ってくるんじゃないか、とも思っていました。
私は、もともと音楽の好みが「王道ポップス系」が大好きだったりするんですが、たとえばチェンに「Cherish」「Bye, Babe」系統を歌わせると、このひとは、もう、めちゃめちゃにうまい。
彼の最大の特徴の「あまく澄んだ高音ヴォイス」が、その「王道ポップス」のメロディラインで、ドライブがかかったようになって、「向かうところ敵なし」の勢いで魅力が炸裂しちゃう感じ。
ええと、ですね……誤解を恐れずに言えば、私、純粋に歌唱力の点だけを論じるとするなら、チェンよりもベッキョンのほうが、オールラウンダー的に歌唱力があるだろうし、音楽的センスも時代の先端を行っていて(そこがチェンには、やや欠けているというか、方向性が違うというか……彼は、良くも悪くも「なつかしい」感じのセンスの持ち主なんです)、その声質が「万人受け」するだろうとも思っています。
チェンの声は、どちらかというと「好きな人は大好きだけど、そうではない人もいる」タイプの声なんじゃないでしょうか。……ちがう?
けれども、そのチェンの声が、ベッキョンよりも、有無を言わせずに光り輝くジャンルのメロディというのがあって、それが「Cherish」とか「Bye, Babe」なんだろうなと思っています。
もうひとつの彼の得意球は、「Universe」「Cry」「Miracles in December」のような、非常にストレートな「バラード」系です。
「EℓyXiOn」で、バラード風にアレンジし直した「Heaven」を、チェンがソロパートとして歌ったとき(そして、これがまた、最高によかったわけですよ・涙)、「この曲をこういうふうに歌うことが、彼のやりたいことであり、得意分野でもあるんだな」と、深く納得するように思いました。
そして「Cry」のサビ。…「Cry 時に急かされて 何もかも忘れるくらいなら…」から始まるチェンの「最高の聴かせどころ」。
私は、この曲、何回聞いても、うっかりしていると、泣きます。
聞く1分前まで、全然悲しい気持ちでもなんでもないのに、この箇所を歌うチェンのあの声を聞くと、涙がこぼれる。日本語で歌詞がダイレクトにわかるからよけいに、あの美しくて悲しい声に「やられる」。
声域的な観点から言っても(注2)、あのパートはチェンしか歌えなかっただろうし、チェンの声の魅力が光り輝いていたと思います。
彼があの歌声を聴かせてくれて、ほんとうにほんとうによかった。
(注2 ベクはここ1〜2年、声が低くなってきていて、22、3歳までは問題なく出せていた高音が出にくくなっている。たぶん「Universe」のサビでも、現在の彼には、わりと厳しいものがあるんじゃないかな、という印象を受けているのだけれど……でも、そのぶん、「男性的な深みのある声」に変わってきているわけで、それはそれで、よい変化なんだと思うんですけども)
チェンは「(歌の)感情を表現する」とか「伝達する」みたいな言辞をよく使います。つまり彼は、そういう命題を常に抱えている歌い手なんだと思っています。
そして、バラードというのは、もっともその命題に取り組みやすい歌の形態なのだと思います。
もちろん、相当に高い歌唱力に支えられていないと、歌えないジャンルでもあります。でも、チェンになら、歌いこなせる実力が備わっているのは、もうこれまでの実績で、証明済みの事実でしょう。
だからこそバラードは、チェンにとって、自負できる「得意分野」でもあり、「やりがいがある」ものなんだろう、と思っています。
けれども、バラードというのはかなり「重い」ジャンルでもあります。
聴いていると、否応なしに、歌が抱える「感情」に引きこまれることになるので、聞き手にもそれなりのエネルギーが要求されます。
早い話が、「作業しながら聞き流せない」わけで、バラードがいっぱい詰まったCDは、(私のような「すでにチェンくんのファン」にとっては問題にならないのですが)、「まだ、彼のファンではないリスナー」にとっては、「エンターテイメントの商品として、成立しにくい」ものになるだろう、と思っていました。
だから、アルバムの中に配置できるのは、バラードなら1曲、もしくは2曲まで。
そして、タイトル曲には、(もっと「聴きやすい」)「王道ポップス系」を持ってくるんじゃないか、と予想していました。
……だってそっちのほうが「売れそう」なんですもん。
まだ出会ってなかったきみに
——そんな私の予想は、あっさりとはずれました。
はずれたわけですが、でも、「はずれて当然」だったな、と今の私は考えています。
「勝手な予想」を繰り広げていたとき、私は「EXOの『チェンくん』のファン」として、あーだこーだと考えていたわけですから。
私はまだ、「アーティストのチェン」には、出会っていなかったのですから。
3月25日からティザー画像が公開されはじめ、アルバムの詳細、トラック・リストなどが徐々にわかってきました。
まず、アルバムのジャケットが「絵」だった…!
(私、かなり驚きました。チェンペンの皆さま、いかがでした?)
しかも、(率直に言わせていただくと)「うまいのか下手なのか、ようわからん系(すみません)」の「安西水丸」もしくは「佐々木マキ」的な、アクリル絵の具の現代アート的イラストレーション。
「え〜〜〜、『絵』なの?」と、はからずもダジャレを発してしまうくらいの驚き。
「『絵』でいいんですか? 私たちの、きれいでかわいくて格好いい、チェンチェンの写真をジャケットにしなくて、(セールス的にも)よろしいのですかSMエンターテイメントさん……!!」と、かなり意外に感じていました。
でも、トラック・リストが発表され、ティザー画像が流れてきて。
アルバムのコンセプトが次第にわかってくるにつれて、「そうか……」と納得が心の中に広がっていきました。
木洩れ日が落ちてくる、木立ちのなかで。
乳白色の靄のたちこめる、草原に立って。
黒い岩の上で、海風に吹かれて。
——そんな自然を背景にして、26歳の青年が、ひとり、たたずんでいる。
そういう、とても静かでうつくしい写真の数々でした。
アッシュホワイトのジャケットを、風をまとうようにふわりと着て、素朴な表情の彼がいます。
ウェストで結ばれたベルトが、サッシュのようなアクセントになっていて、おとぎ話のなかの貴公子のようです。
唇のはじっこが、きゅっと上がって、いつも笑っている形に見える独特なかたちの唇、鋭角的な頬や顎のライン、すうっと通った鼻梁。
聡明さを示すように広い眉間、眉尻のさがった、特徴的な眉。
はっきりとしたふたえの、大きなつり目、伏せられると濃い影をつくる長い睫毛。
それから、瞳。
インタビューに答えているとき、バラエティであーだこーだしているとき、「EXOのチェンくん」の瞳はたいてい、あの明るい笑顔とワンセットになって、きらきらした光で輝いているのだけど。
このアルバムのために取られた写真のチェンは、「長い夢から醒めたばかりのひと」のように、物憂げでぼんやりとした瞳をさまよわせています。
その瞳が、たまさかこちらに向けられることがあっても、強く射るような視線を作ってはいません。
あまさと、その美しさだけが印象に残るような、そういう静かな瞳です。
「アーティストのチェン」が作りだしたアルバムは、とても静かで美しいものでした。
1曲めから6曲めにいたるまで、すべて。
ピアノを中心にしたシンプルな伴奏、悲しみに満ちたスローテンポの旋律が続いています。
そういうメロディにのせられて、愛の終わりや恋人たちの別離、それに伴うせつなさや悲しみが、非常にストレートに歌い上げられています。
かなしくて、さびしい。
だけど美しくて、あたたかい。
そういう、きれいな花のような印象の静かなバラード「だけ」を選択して、6曲すべてを構成してくるとは、私は予想もしていませんでした。
自分の歌の力「だけ」で、挑んできたんだな、と思いました。
これほどチェン が、「まっすぐな球」を投げてくるとは、本当に予期できなかった。
ゆえに、最初に聴いたときには、まずその「驚き」が、胸に広がったのです。
けれども。
何度もこのアルバムを聴くにつれて、「アーティストのチェン」は、私たちがずっと愛してきた「EXOのチェンくん」と、やはり同じひとりの人物なのだ、という納得も心に広がっていきました。
私はこの記事のすこし前に、彼について、「何もつけなくても、美味しいパン」みたいなひとだ、という主旨の文章を書きました。
上等な素材を使って、プロフェッショナルの技術で焼き上げられたパンは、生地それ自体の味がいい。
だから、ジャムとかバターとか、余計なものをつけなくても、ただ「パンの味」だけで、ちゃんと美味しい。
私にとってチェンくんは、そういうひとに思える、と。
「EXOのチェンくん」には、ある素朴さがあります。
飾らなさ。まっすぐな感じ。
音楽に対して、一貫して高い情熱を持ち続けているシンプルさ。
——私たちは、そういう彼の素朴さを、ずっと愛してきたんだと思うのです。
そんな彼の向こうにいる、もうひとりの彼、「アーティストのチェン」が作るならなら。
やっぱり、それは、「何もつけなくても、美味しいパン」みたいに、よけいな飾りなどないのに、とても美しい音楽になって当然だったのです。
「音楽が好きです。だから歌手になろうと思いました」
チェンは、わりとこの言辞を繰り返すのですが、この言葉は、シンプルな明快さと同時に、非常な強靭さをも持っています。
その強さがあるからこそ、もろく壊れやすい人の心に繊細に寄り添う美しい花を——この「April, and a Flower」というアルバムを、チェンは、咲かせきることができたのだと思うのです。
(2019.04.07)
(この記事は「April, and a Flower」8です。)
今回、この稿を書くにあたって、非常に時間がかかってしまいました。
なかなか文章を書く時間が取れない時期と重なってしまったのも(鬼忙しい新学期+海外旅行疲れ・苦笑)あるんですが、「思うこと・感じること」がありすぎて、それをまとまりある文章として、書き上げるのが難しかったんだな、という気がしています。
多くのチェンペンの皆さまと同じように、この「April, and a Flower」、何度も繰り返し聴いています。
「こういう『どストレートな球』で攻めてくるとは思っていなかった…!」という最初の驚きがややおさまったあと、現在は、チェン が作りあげた音楽の世界を聴き込む段階に入っています。
ほんとうに美しいアルバムです(しみじみ)。
なので、まだまだ、語りたいです。……次の記事は、チェン の作り出した「音楽の世界」について、ちゃんと踏み込んで語りたいと思っています。
ここまでおつきあいくださってありがとうございました。
PS .1 なぜか多くの皆様にご心配いただいている(?)、チェンチェンの応援うちわ作り。
今、ようやく材料を買ってきた段階です(苦笑)。
そして、いろいろ買い込んできたのが家人にバレてしまい
「こんなに涼しいのに(北の大地には、雪が降る日でした)、なんでこんなに大きなうちわを買ってるのか、と思ったら、そうか、コンサートのためかー」
——と笑われてしまいました(苦笑)。
PS.2 まだ、北の大地には、「April, and a Flower」のCDが届きません…もう届いてくれてもいいんじゃないのかしらん…昨日は「4月、そして雪」とゆーか、まだ雪が降ってるような寒い日だったんですが…
PS3 …ついにCBXのマジカルサーカス初日まで、10日を切りましたね…! なんだか、想像しだすとドキドキしてたまりません…そして「Beautiful Goodbye」のMVに日本語字幕がついていたことから、やっぱり彼はステージで歌ってくれるんじゃないかな、とか想像しだすと……もうそれだけで泣けちゃいそうです。
(あとねえ……ベク、ピアノ弾かないかな〜)
チェンのソロ活動に関する記事について、まとめたページを作りました。よろしければ、ぜひ…!
★次の記事は…こちら! EXOくんたちの7周年記念に寄せて。
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(たくさんの方にコメントや応援をいただいているのですが、全然お返事できなくてごめんなさい。でも、すべて嬉しく拝見しています。お時間をさいて読んでくださって、ほんとうにありがとうございます。)